活動報告:篠原有司男の<複製絵画(イミテーション)>をつくる

市民のアトリエでは、コレクション展「東西交流160年の諸相」に連動した企画として、「篠原有司男の<複製絵画(イミテーション)>をつくる」を開催しました。

横浜美術館は前衛美術家の篠原有司男氏が1964年に制作した《ラブリー・ラブリー・アメリカ(ドリンク・モア)》を所蔵しています。
篠原氏は同年の『美術手帖』2月号に「複製絵画(イミテーション)のこころみ」と題してこの制作方法を詳しく紹介し、読者に複製を呼びかけています。

今回、実際に複製を試みることで、作品のメッセージやイミテーションの意図を考える機会にしようと、このワークショップをおこないました。

IMG_6557_s.jpg

初めにコレクション展の会場で作品を鑑賞しました。
コレクション展担当学芸員より、この作品が制作された1964年当時の日本の状況や、篠原氏がアメリカのポップ・アートに影響を受けたことが紹介されました。
これから制作する作品のお手本となるので、参加者の皆さんはいつにも増してじっくりと目を凝らしている様子でした。

IMG_6613_s.jpg

鑑賞後、作品の中で最も目立つ手の部分から制作を始めました。

IMG_6611_s.jpg

片手にコカ・コーラの瓶を握り、その状態を粘土で包み込み、型を取ります。
瓶を粘土に残したまま、手だけをそーっと抜きとると雌型ができます。
その型に石膏を流し込み、キャンバス固定用の金具を差し込んだところで午前の作業が終了しました。
お昼休みの間に石膏が固まるのを待ちます。

午後、いよいよ石膏を型から外します。ドキドキの瞬間です。

IMG_6684_s.jpg

粘土を取り除くと生々しい手が出現!
この工程で失敗があるのではないかとスタッフはとても心配していましたが、全員が無事、型どりに成功しました。
篠原氏の作品に忠実に制作したものの、すでにそれぞれの手に個性が表れています。
取り出した石膏のバリ(不要な突起)や汚れを落としてから乾かします。

IMG_6723_s.jpg

続いて、キャンバス部分の制作にとりかかります。
今回は『美術手帖』に記載された内容に忠実に、横浜美術館の所蔵品より少し小さい10号キャンバスを使用しました。

IMG_6732_s.jpg

篠原氏の作品には下描きの跡が見当たりません。
お手本に則り、マスキングテープでストライプの位置を決めてから蛍光塗料を塗っていきます。
蛍光塗料は、1964年当時も日本で発売されていた「ネオカラー」を使用しました。

IMG_6750_s.jpg

星と文字の部分は、厚紙をカッターで切り出して型をつくります。

IMG_6755_s.jpg

厚紙の型をキャンバスに当てて、星の部分を蛍光塗料で塗ります。

IMG_6768_s.jpg

文字の部分は、厚紙の型をキャンバスに当てて、スプレーを噴きかけて仕上げます。

IMG_6779_s.jpg

キャンバスをよく乾かした後、石膏の手を取り付けて<複製絵画(イミテーション)>の完成です。
篠原氏のモットーは「早く、美しく、そしてリズミカルであれ」
一日の作業で複製に挑戦したことで、そのスピード感を体感していただけたことと思います。

 そして最後に再び展示室に向かい・・・

IMG_6851_s.jpg

展示室の篠原作品の下に、完成した<複製絵画(イミテーション)>を並べて鑑賞しました。
篠原氏が「イミテーション・アート」と称した作品が、他者によってイミテーションされることで増殖していきます。
一点一点には作者の個性も少しずつ表れています。
本作の発表から55年を経て実現したこの光景に、作品のもつ力強さを感じずにはいられません。

IMG_6829_s.jpg

勢揃いした「イミテーション・アート」を前に、笑顔が溢れます。
参加者の方々は、篠原氏の制作を追体験したことで「きっちり作る部分とそうでないところのバランス」、「コーラを持つ手が左手である理由」など、作品をみるだけでは思い至らないような様々なことに考えを巡らす機会になったと話していました。

ご参加いただいた皆様、そして遠くニューヨークの地でこのワークショップの成功を気にかけてくださっていた篠原有司男さん、どうもありがとうございました。

「みる、つくる、まなぶ」を理念としている横浜美術館では、今後もこのように様々な角度から作品への理解を深める企画を続けていきたいと思います。

 (市民のアトリエ担当)

 

 横浜美術館コレクション展「東西交流160年の諸相」

[篠原有司男の<複製絵画(イミテーション)をつくる> 実施 2019/11/24(日)10:30~16:30]