イサム・ノグチと長谷川三郎展 学芸員ブログ 第1回 1月13日にオープニング・リレートークを開催しました

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横浜美術館の今年最初の企画展として、1月12日に「イサム・ノグチと長谷川三郎―変わるものと変わらざるもの」展が開幕しました。1950年に日本で運命的に出会った彫刻家のイサム・ノグチと画家の長谷川三郎。ふたりの交友と創作の軌跡をたどる展覧会です。
これから6回にわたり、担当学芸員が交替で学芸員ブログをお届けします。

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今回は、開幕翌日の1月13日に開催されたオープニング・リレートークについてリポートします。「変わるものと変わらざるもの―1950年代のノグチと長谷川」と題し、横浜美術館レクチャーホールで開催された本イベントでは、3人のスピーカーが登壇しました。

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最初は、本展企画者のひとりでニューヨークのノグチ美術館学芸員マシュー・カーシュ氏による講演「堆積した印象:ノグチと長谷川の写真による日本旅日記」。ノグチ美術館のアーカイヴ資料から、ノグチと長谷川の交流に関する貴重な写真を紹介してくださいました。ノグチと長谷川は、出会ってすぐに関西旅行へ出かけています。このとき撮影された京都の詩仙堂でのんびりと過ごすふたりの様子や、薬師寺で拓本をとるノグチ、奈良で野点を楽しむ一行の写真などが次々と投影され、発見とインスピレーションに溢れたこの旅の雰囲気が伝わってきました。

   

つぎは、横浜美術館主任学芸員の中村尚明にバトンタッチ。「イサム・ノグチの《広島メモリアル》」と題し、ノグチが広島の原爆犠牲者慰霊のために手がけたプロジェクトについて解説しました。広島の平和公園に設置するためノグチが考案した《広島の死者のためのメモリアル》のデザインには、ノグチが長谷川三郎と熱心に見た「家形埴輪」や「茶室」が参照されました。このデザインは実現しませんでしたが、展覧会では慰霊碑のモデル(神奈川県立近代美術館蔵)と、後年米国に設置する計画のため改めて制作されたモデル(広島市現代美術館蔵)がご覧いただけます。

   

さいごは、本展企画者のひとりでサンフランシスコ州立大学のマーク・ディーン・ジョンソン教授による講演「アメリカでの長谷川三郎 広く開かれた道」。長谷川三郎は1954年から拠点を米国へ移し、1957年に客死したため、この時期の活躍はあまり日本では知られていません。長谷川は1954年ニューヨークの個展において、ノグチとの出会いを機に着手した墨や拓刷りによる作品を発表。そのオープニングには、マルセル・デュシャンやルイーズ・ブルジョワなど、名だたる芸術家や美術関係者が訪れたそうです。その後サンフランシスコに職を得た長谷川は、着物姿で禅を講じ、茶道や書の実演もこなして、多くの若手芸術家から敬愛されたことなど、私たちの知らない長谷川像が示されました。


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つづく質疑応答では、ノグチの目指した社会と彫刻のつながりや、長谷川三郎の再評価などについて活発な議論が交わされました。ノグチと長谷川の生きた時代をいま顧みることへの関心の強さと、その重要性が改めて認識されたイベントとなりました。

(江口みなみ)