「荒木悠展 複製神殿」担当学芸員の大澤です。
前回のコラムからあっという間に1ヶ月以上過ぎてしまいました。コラムの更新が遅くなってしまい、大変申し訳ありませんでした。
先週の金曜日、「荒木悠展 複製神殿」が開幕いたしました。開幕から1週間が経ちましたが、既に1,200人を超える方にお越しいただき、荒木さんの注目度の高さを改めて実感しています。
撮影:山中慎太郎氏
また、開幕の翌日にはアーティスト・トークを開催しました。こちらにもたくさんの方にお越しいただき、幸先の良い展覧会のスタートが切れたことを嬉しく思います。
撮影:佐藤毅氏
さて、前回のコラムでご紹介した荒木さんのインタビュー映像、先月末にようやく完成しました。既にウェブサイト上でご覧になった方も多数いらっしゃるのではないでしょうか。
じつは今回、2種類のインタビューを作成しています。美術家としての活動のほか、Art Translators Collective(アート・トランスレーターズ・コレクティブ)という美術専門の通訳・翻訳・プロジェクトの企画運営を行う専門家集団にも所属する荒木さん。今回はその能力を生かして、英語と日本語でインタビューを収録し、ひとつは英語インタビューの日本語字幕版として、もうひとつは日本語吹き替え版として完成させました。
日本語吹き替え版
日本語字幕版
インタビューの冒頭で述べられているように、荒木さんは13歳のとき、家族で二度目の渡米をしました。その際、英語がほとんどできなかった荒木さんは、「見よう見まね」で英語を習得します。しかし、英語を覚えれば覚えるほど、自分のなかに「日本人としての自分」と「アメリカ人になりきれない自分」という、二つの性質を認識するようになっていったそうです。「自分はニセモノではないだろうか。」この体験は、「本物と複製(ニセモノ)」を問う今回の展覧会のコンセプトに繋がるとともに、「誤訳」という考え方を広く捉え、作品のテーマに据える荒木さんの活動にも繋がっていきます。
※荒木さんの言葉に関わる体験については、3/1発売の『Pen』掲載インタビューでも話されています。新作のキーワードとなっている「casting(キャスティング)」についても触れられていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
日本語と英語。広義には日本とアメリカ(もっというと西洋と東洋)は、荒木さんにとって重要なテーマです。インタビュー字幕版は会場で上映しているほか、荒木展の英語サイトに、吹き替え版は荒木展の日本語サイトでご覧いただけます。
こうしたコンセプトのもとバイリンガルで制作されたインタビューは、「今回の展覧会の作品のひとつ」(作家談)に仕上がっています。
(大澤紗蓉子)