長谷川潔:模写から創造へ

長谷川潔の《夢》とルノワールの《大水浴》の模写を並べると、ポーズがよく似ていることに気づきます。模写の制作時期が明確でないため直接的な影響関係は指摘できませんが、脚を組んですわる女性の姿態に、彼が強い関心をもっていたことをうかがわせます。芸術家のいとなみにとって、まねぶ(真似て倣[なら]う)ことは大きな礎[いしずえ]となります。イメージの蓄積が膨大であればあるほど、独創への道も広がるのです。

ルノワールのほかに、ボッティチェッリやメムリンク、モディリアーニなど、長谷川はいろいろな画家の絵を模写しています。古典の参照と日常的なスケッチの響きあいのなかから、理想のかたちを刻みだしていった長谷川の創造を、2点の版画を軸に紹介します。

長谷川潔(1891-1980)
《夢》
大正14年
ドライポイント
HASEGAWA Kiyoshi (1891-1980)
Dream
1925
drypoint

長谷川潔《夢》