ミロとデルヴォーの版画

ここでは、シュルレアリスム運動にかかわった画家ミロとデルヴォーによる版画作品を紹介します。

ジョアン・ミロは、版画制作を自己のイメージをひろく伝えることのできる手法として重視し、また、その表現に新たな可能性を追究できるものとして積極的に取り組みました。「岩壁の軌跡」は6点で構成される、エッチングとアクアチントによる作品です。その題名にもあらわれている通り、細く鋭い線とカラフルな太い線が、岸壁の上に描かれた自然の造形、あるいは太古の人間が描いた「絵画」を想起させ、その自由な線の遊びは、見る者を空想の世界へと誘[いざな]います。

ポール・デルヴォーは、親友の評論家で詩人のクロード・スパークの短編「最後の美しい日々」「醜[みにく]い男」「嵐」のために挿し絵を描くことになり、複数の作品を制作しました。しかし、その後2人の間におこったいさかいのために、結局イメージが短編集に使われることはありませんでした。そこでデルヴォーは、原画から16点を選んで版画作品として作りなおし、それに協力者とともに水彩を施して完成させたのがこれらの作品です。特定のテキストのために描かれたものではありますが、奇妙な空間とそこに描かれた無表情な女たちや、骸骨の存在が非現実的な雰囲気を醸し出し、デルヴォー芸術の特徴がよくあらわれた作品となっています。