須田一政:わが東京 Suda Issei : My Tokyo

須田一政[すだ・いっせい]は、1940年東京神田生まれ。東京綜合写真専門学校を卒業後、寺山修司が主宰する演劇実験室「天井桟敷[てんじょうさじき]」の専属カメラマンを経て、1971年よりフリーランスの写真家となります。6×6cm判のフォーマットを自在に操る須田のスタイルは、『カメラ毎日』(1975-77)に断続的に連載した「風姿花伝」シリーズにおいて確立されました。

1979年に刊行された『わが東京100』には、生まれ育った東京神田をはじめ、浅草、上野、谷中といった須田のよく知る下町を舞台とした作品がおさめられています。そこには一見何気ない日常がうつされていますが、人の記憶の断片をのぞきみるような不思議な世界への入口があり、時として非現実的な印象を与えます。

1987年、須田は神田を離れ千葉市に転居し、この頃からアジアを旅しながら撮影したスナップなども発表するようになりました。「東京でも、千葉でも、旅をしていても、結局ひかれてしまうのは、私自身が好む空間であり、造形であり、色であり、材質である」。特定の地域や土地を記録するのでも、そこに生きる人びとの感情を表すのでもなく、須田は自分のアンテナに触れた一瞬を切り取り、現実と超現実の間に漂う空気をとらえようとしています。そうした姿勢は、初期から現在まで変わりなく続いています。

今回は『わが東京100』におさめられた、日常と非日常が並立する須田の写真の世界を紹介します。

須田一政(1940年生まれ)
《わが東京:湯島》
昭和52年
ゼラチン・シルバー・プリント
SUDA Issei (born in 1940)
My Tokyo: Yushima
1977
gelatin-silver print

須田一政《わが東京:湯島》