平成18年度新収蔵美術作品・資料と新規寄託作品について Newly donated or entrusted works in the year 2006

 平成18年度、横浜美術館では寄贈作品・資料48点、寄託作品33点が新たに収集されました。このコーナーではその内の46点を展示します。以下に主な作家を紹介します。

横浜・神奈川ゆかりの作家たち

  • 平野杏子[ひらの・きょうこ、1930年生まれ]は伊勢原市の出身で、平塚在住の画家です。仏教的死生観に根ざした幻想的な作風を展開しています。《冠を流したオフェリア》はシェークスピアの悲劇『ハムレット』に想を得た作品です。
  • 山崎秀夫[やまざき・ひでお、1924-1983]は横浜生まれの画家です。1953年ハマ展でデビューし、1956年横浜美術協会会員、1975年から2期4年にわたり同会会長を務めました。「ドン・キホーテ」は山崎が繰り返し描いた主題です。
  • 長谷川潔[はせがわ・きよし、1891-1980]は横浜生まれ。銅版技法マニエル・ノワール(メゾチント)を20世紀に復興させた版画家です。横浜美術館では彼の版画作品約650点、素描、水彩、下絵等約1300点、油彩画7点を収蔵しています。今回は1940年のパリ陥落に際してフランス西南端の街ビヤリッツに避難していたときのスケッチブック1冊と、長谷川が挿絵や表紙を手がけた図書資料3点が新たに加わりました。

幕末の浮世絵

  • 三代目歌川豊国[うたがわ・とよくに、1786-1864]は幕末を代表する浮世絵師のひとりで、美人画や役者絵でひろく知られています。《源氏模様娘雛形[げんじもようふりそでひながた]》をはじめとする3枚または2枚続きの役者絵は、並べ方が決まっており、舞台上の役者の位置関係を再現できる構図になっています。それによって臨場感あふれる舞台パノラマが楽しめるしかけです。

現代美術

  • 奈良美智[なら・よしとも、1959年生まれ]は、子供や動物の姿を不思議な空間の中に表します。大きな頭部と強調された眼差し、主人公をくっきりと際だたせる周囲、見おろしたり、真横から見据えたりする視点のおき方などから、忘れてはならないもの、未解決のまま心の奥底に取り残された遠い記憶や夢と向き合うような印象が生まれます。「アルゼンチンババア」はよしもとばななの小説の挿絵となったもの、《Vicky》は画家のドイツ留学中のもので、油彩による顔のイメージの最初期の作例です。《KAI-TEN》は第二次大戦中の日本軍が特攻に用いた有人魚雷「回天」の名にちなんだものと解釈されます。

奈良美智《KAI-TEN》 奈良美智(昭和34年生まれ)
《KAI-TEN》
平成13年
ミクストメディア、アクリル
寄託作品
NARA Yoshitomo (born in 1959)
KAI-TEN
2001
mixed media and acrylic