写真展示室 / 1940年代の写真

ここでは、主に1940年代、つまり第二次世界大戦の終結をはさむ10年間の時代と写真表現との関わりを示そうとするものです。この時代には戦争報道や国策宣伝の写真が多く生み出される一方、自然と文化への洞察を示す写真も制作されています。

アメリカのアンセル・アダムスは、《月の出、ヘルナンデス、ニューメキシコ》(1941年)など自然に対する畏敬の念をあらわす代表作を生み出し、作家として充実期を迎えています。1940年代までに、アダムスやエドワード・ウェストンたちは、大型カメラで自然の風景や事物を緻密にとらえることで、写真芸術の規範の一つを確立したといえます。

1944年6月の連合国によるノルマンディー上陸作戦を記録したロバート・キャパの写真は、『ライフ』誌での掲載を通じて世界中に流布されました。第2次世界大戦中から戦後にかけて、特に連合国側のグラフ・ジャーナリズムでは、人道主義的なメッセージが写真によって図解され、大量に、素早く伝えられました。このようなグラフ・ジャーナリズムのあり方は、その後の社会の視覚的な環境に大きな影響を及ぼしました。

戦時下の日本では、名取洋之助(なとり・ようのすけ)、土門拳(どもん・けん)、木村伊兵衛(きむら・いへえ)など優れた写真の技倆と知識を備えた写真家が、国策宣伝に深く関わりながら、対外宣伝のグラフ雑誌やカメラ愛好家向けの写真雑誌のために、制作を続けました。一方で土門拳と濱谷浩(はまや・ひろし)、また坂本万七(さかもと・まんしち)らは、戦争の渦中から逃れるようにして、日本の伝統文化や気候風土に対する関心を深めていきました。

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