展示室2 /現代の美術

1970年代以降、内外の美術では表現方法として写真技法をさかんに使うようになり、それまで用いられなかった新しい素材が大胆に用いられるなど、既成(きせい)の美術作品の制作や鑑賞のありかたを見直す、実験的な作品がつぎつぎと生み出されています。

石原友明(いしはら・ともあき)は、1959年大阪生まれ。1980年代より写真による自身のイメージをあつかう作品により注目を集めました。1988年以降、現代美術の祭典ヴェネツィア・ビエンナーレの若手部門「アペルト'88」に参加するなど、内外の重要な美術展へ出品しています。石原はつねに、自らの身体感覚に根ざしながら、美術作品の見方を問い直す作品を作り続けています。

《無題、1986》は、複数の黄色く塗った画布に感光材を上塗りして等身大の自身の裸体の断片を焼き付け、それらの画布を螺旋(らせん)階段状に重ねると、石原の全身像が現れるインスタレーションです。撮るものと撮られるものの立場が曖昧(あいまい)になった状態で、私的な裸体を作品の中に投影することで、現代社会における個人の孤独や不安が明らかにされています。《I.S.M.(光)》は、写真と並んで石原が特に好む素材である革を用いた巨大な「彫刻」作品です。それは、「彫刻」という言葉から想像される堅固(けんご)な触感から解き放たれ、革の持つ柔軟(じゅうなん)な感覚によって、見る者に彫刻の新しい視覚体験を提示しています。


石原友明
《無題、1986》
昭和61年
ISHIHARA Tomoaki
Untitled, 1986
1986


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