展示室3 / 幕末・明治から大正期の絵画と版画

横浜は、1859年(安政6)に開港して後、東西の交易を担うとともに文化交流の場となり、チャールズ・ワーグマンやジョルジュ・ビゴーなど来日した外国人画家たちが黎明期の日本の近代絵画に大きな影響を与えました。ワーグマンに習い、わが国でいちはやく油彩画を試みた高橋由一(たかはし・ゆいち)や五姓田義松(ごせだ・よしまつ)らは、西洋画から遠近法や陰影表現、 光の表現をとり入れ、対象を写実的に描きました。
明治末から大正期にかけては、ヨーロッパに留学した画家たちの経験や美術雑誌を通して、西洋の美術がさかんに紹介されるようになりました。岸田劉生(きしだ・りゅうせい)や木村荘八(きむら・しょうはち)たちは、1915年(大正4)に草土社を結成し、西洋絵画に見られる克明に対象を写す技術を追究しました。
江戸時代後期に隆盛を極めた浮世絵版画は、文明開化に伴い西洋画の空間表現や明暗表現をとり入れて変貌を遂げました。小林清親(こばやし・きよちか)は江戸浮世絵に西洋画の要素を融合し、「光線画」と称する作品群で光と影を巧みに表現しました。大正期には、版元渡邊庄三郎(わたなべ・しょうざぶろう)が浮世絵版画復興の推進力となり、伊東深水(いとう・しんすい)、橋口五葉(はしぐち・ごよう)、川瀬巴水(かわせ・はすい)ら当代の画家とともに新しい感覚の作品を制作し、「新版画」として出版しました。

川瀬巴水《「東京十二題」春のあたご山》川瀬巴水
《春のあたご山 「東京十二題」より》
大正10年
KAWASE Hasui
Atago-yama Hill in the Spring
From the Woodblock Print Album
"Twelve Scenes of Tokyo"
1921


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