版画には木版や銅版、リトグラフ、シルクスクリーンなど多種の技法があります。それらを併用することで、表現の可能性はさらに広がります。現代アジアの作家たちも、多様な技法を駆使して豊かな造形を開拓しています。コー=ウドムヴィトの《儀式のシンボルNo.18》は、平面的な刷りだけではなく、画面に実際のモノ(ここでは金箔とひも)を貼りつけるコラージュの手法をとりこんでいます。藤田修は、エッチングの硬質なマチエール(肌合い)と写真のイメージを結合しています。
新しい表現を模索するなかで、自国の伝統をふり返る作家もいます。「モンゴル秘史」の明快なタイトルのもと、矢や炎、特異なカリグラフィーで草原文化を彷彿させるツルテミン。北岡文雄の連作では、掛軸や短冊を思わせる形態に日本的な自然観が調和しています。キム・ミヒャンの場合、伝統は素材にあらわれています。ここで用いられた韓国の伝統的な手漉き紙は、その質感によって、作品のイメージに大きくかかわっています。
作家たちのまわりには、新旧を問わず、たくさんの素材が散らばっています。そこから何を選びとり、何を組み合わせていくのか。それは、現代版画を眺めるひとつの視座となるでしょう。
・藤田 修 "Mirror" 1992年 フォトエッチング 藤田修氏寄贈 95-PRJ-007
・藤田 修 "Notice" 1992年 フォトエッチング 藤田修氏寄贈 95-PRJ-008
・藤田 修 "Decision" 1994年 フォトエッチング 藤田修氏寄贈 95-PRJ-011
・H. A. カルナラトネ(スリランカ) "三日月" (「アジアの現代版画 1989」より) 1989年 リトグラフ 90-PRJ-001-11
・キム・ミヒャン(韓国) "ランドスケープ (LANDSCAPE)" 2000年 木版 2001-PRJ-001
・北岡 文雄 "「風土連作」" 渓流 1985年 木版 94-PRJ-042-01
・北岡 文雄 "「風土連作」" 氷雪 1985年 木版 94-PRJ-042-02
・北岡 文雄 "「風土連作」" 波 1985年 木版 94-PRJ-042-03
・北岡 文雄 "「風土連作」" 岩と樹 1985年 木版 94-PRJ-042-04
・北岡 文雄 "「風土連作」" 潮だまり 1985年 木版 94-PRJ-042-05
・北岡 文雄 "「風土連作」" 流木 1985年 木版 945-PRJ-042-06
・小林 敬生 "蘇生の刻 ―群舞 96.3―" 1996年 木口木版 98-PRJ-001
・タヴォルン・コー=ウドムヴィト(タイ) "儀式のシンボル No.18" 「アジアの現代版画
1989」より 1989年 木版、シルクスクリーン、金箔、ひも 90-PRF-001-12
・ティエン・シー・ロン(マレーシア) "ここはどこですか?" (「アジアの現代版画
1989」より) 1989年 エッチング、アクアチント 90-PRF-001-06
・ラム・クマール・パンダイ(ネパール) "人間の生命" (「アジアの現代版画 1989」より) 1989年 木版 90-PRF-001-06
・アブドゥル・ジャリル・ピロウス(インドネシア) "真心のこもった/友好使節" (「アジアの現代版画
1989」より) 1989年 エッチング 90-PRF-001-01
・ハビブル・ラーマン(バングラデシュ) "無題" (「アジアの現代版画 1989」より) 1989年 エッチング 90-PRF-001-01
・嶋田 しづ "リズミカルなティポグラフィー" 1974年 リトグラフ 嶋田しづ氏寄贈 2001-PRJ-007
・嶋田 しづ "漂う雲片プロヴァンスの峰" 1974年 リトグラフ 嶋田しづ氏寄贈 2001-PRJ-011
・嶋田 しづ "砂丘の夢" 1975年 リトグラフ 嶋田しづ氏寄贈 2001-PRJ-012
・田嶋 宏行 "古文 D" 1970年 木版 88-PRJ-208
・田嶋 宏行 "大道芸人" 1981年 木版 88-PRJ-211
・田嶋 宏行 "赤い形" 1988年 木版 88-PRJ-215
・武田 律子 "「旋」作品9" 1995年 シルクスクリーン 96-PRJ-012
・タン・スイ=ヒャン(シンガポール) "聴経" (「アジアの現代版画 1989」より) 1989年 エッチング、アクアチント 90-PRF-001-10
・ムンクフジン・ツルテミン(モンゴル) "”モンゴル秘史 (1240-1990)”750周年" (「アジアの現代版画 1989」より) 1989年 シルクスクリーン 90-PRF-001-07
・パク・ヤンゲン(韓国) "夕食" 1998年" ドライポイント 98-PRF-001
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