あいさつ

 横浜美術館では、多くの篤志家からの貴重な作品のご寄贈も横浜美術館コレクションの充実に大きく貢献いただいています。今年度は個人コレクターや支援者の活動の一端をコレクション展を通してご紹介いたします。

 2011年には「賛美小舎(さんびしょうしゃ)」こと上田國昭(うえだ・くにあき)氏・克子(かつこ)氏夫妻からの150件171点が寄贈されて、1980年代以降の現代美術家の作品群に大きな厚みがもたらされました。

 上田氏は、岡倉天心の思想やマコト・フジムラが示す日本文化の根底には美を賛える心があるという考えに共鳴して、自邸を「賛美小舎」と名付けたと述べています。若手美術家の可能性を支援しようと夫妻で集めた作品は、主に自邸に飾られ保管されて、やがては45作家と1組、360件以上の規模に至りました。上田夫妻は、市民一人一人が美術文化を支える<美術民主主義>の実現を掲げて、収集作品を一切売却せずに公立美術館に寄贈しました。目下10館に分蔵された中で、当館は最多の175点を収蔵しています。

 今期、その上田コレクションを初めてまとめてご紹介します。理想と審美眼をあわせ持った市民コレクターである上田夫妻が、20年以上かけて築き上げた現代美術のコレクションの魅力をどうぞお楽しみください。

荒木 経惟 ≪横浜美人100人≫

荒木 経惟 ≪横浜美人100人≫ 
2008年(平成20)
ゼラチン・シルバー・プリント
90.0×60.0cm
荒木経惟氏寄贈
Photo © ARAI Takashi

 また今期の写真展示室は、2008年に当館で撮影された
≪横浜美人100人》を中心に、現代日本を代表する写真家として国際的な評価を得ている、アラーキーこと荒木経惟の特集展示をご覧いただきます。

 あらためて、コレクションの充実と展示にご支援をいただいている皆様に、心より感謝申し上げます。


横浜美術館