横浜美術館

報道写真 写真に残された20世紀

沢田教一 《塹壕での食事》

沢田教一 《塹壕での食事》
n.d.(撮影年不詳)(1986 Print)
ゼラチン・シルバー・プリント
32.5×21.7㎝

 報道写真は、1920年代後半にドイツで発展し、第二次世界大戦前後にはアメリカやアジアでも大きな影響力を持ちました。ロバート・キャパとともに写真家集団「マグナム・フォト」を設立したデヴィッド・シーモアやアンリ・カルティエ=ブレッソン、アメリカのグラフ雑誌『ライフ』で活躍したアルフレッド・アイゼンスタットらは、1930年代初頭に報道写真家として活動を始めました。「決定的瞬間」という独自の美学によって写真表現を牽引したカルティエ=ブレッソンの写真には、報道という役割にとらわれることのない芸術的な構図と、そこから被写体の本質へ迫ろうとする鋭い視点を見ることができます。

 日本では、1933年、ドイツで報道写真家として活動していた名取洋之助により「報道写真」という言葉と方法論が伝えられました。名取は、日本の報道写真の普及を目指して「日本工房」を設立し、日本文化を海外に紹介するグラフ雑誌『NIPPON』を創刊しますが、やがて戦時体制に巻き込まれてゆきます。戦後は、キャパやカルティエ=ブレッソンの影響をうけた沢田教一や浜口タカシといった報道写真家たちが登場し、ベトナム戦争や大学紛争を撮影しました。

 この展示にあわせて、森村泰昌「なにものかへのレクイエム」シリーズから、1920年、赤の広場で演説を行うロシア革命の指導者、ウラジミール・レーニンの写真をもとにした映像作品と写真作品をご紹介します。

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