現代美術家・演出家、高嶺格。そのユーモアに満ちた作品を紹介する、首都圏初の大規模な個展。

本展は、現代美術家・演出家の高嶺格(たかみね・ただす)の首都圏初の大規模な個展です。2000年代初頭の作品から、横浜で滞在制作される新作までを紹介します。
サブタイトルの「とおくてよくみえない」とは、混雑した展覧会で観客がしばしば発するフレーズの一つです。本来、自由な表現によって成り立つ美術作品が、美術館や展覧会という様々な制約の中で展示されることで生じる矛盾。最新作において高嶺が制作の出発点に据えたのは、そうした齟齬に対する素朴な疑問と興味です。ここから出発した高嶺が、その先に見つけるものは何なのか。それはきっと思いもよらない作品として、私たちの前に現れてくることでしょう。

高嶺は、平面、立体、映像作品をはじめ、音や映像、PC制御による仕掛けなどを駆使したメディア横断的なインスタレーション、パフォーマンス、舞台の演出など、多彩な表現形態により、常にインパクトを与える作品を発表しています。2003年のヴェネツィア・ビエンナーレをはじめ、2006年の釜山ビエンナーレなど国際展への出品も数多く、国内外で高い評価を得ています。2005年の横浜トリエンナーレ(第2回)では、劇場のように巨大な空間で、自身の故郷である鹿児島の方言と、世界語として生み出されたエスペラントの言葉を、映像と土に型押しした文字で映し出していく映像インスタレーション《鹿児島エスペラント》を発表。光と音、オブジェと映像が一体となって展開したこの作品は、高い注目を集めました。

高嶺が制作の糸口とするのは、現代社会における不条理性です。アメリカ中心に進むグローバリズムへの批判を、巨大な粘土の塊と格闘する人間の振舞いにより象徴的に表現した《God Bless America》、自身の恋人との関係性から、在日外国人をめぐる差別的な感情の問題に触れた《在日の恋人》(2004年)、 プレハブ工法の普及により失われていく伝統的な住居建築についての意識を呼び起こす《Good House, Nice Body》(2010年)など、高嶺は人間の行為に潜む矛盾や非合理な側面に目を向け、批評的に、そしてユーモアあふれる作品として提示します。

 

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