ダリとシュルレアリスムの部屋
Salvador Dalí and Artists of Surrealism
展示風景

展示風景

 

「シュール」という言葉の元になったシュルレアリスムは、1920年前後にフランスの詩人アンドレ・ブルトンらが創始した芸術・文化運動です。「超現実主義」と訳されますが、これは非現実の世界へ超越することではありません。シュルレアリスムの詩人や美術家は、例えば日常の些細(ささい)なできごとや月並みなものの中に、偶然でしかも運命的な出会いを期待しています。それをきっかけとして現実の世界が以前とはまったく別の光彩を帯びて輝きだすというのです。マン・レイの場合、それは釘を生やしたアイロンを作るきっかけとなり、ダリはパトロンの女性に古い神話の主人公の生まれ変わりを見出し、エルンストは絵の具の染(し)みから原始の風景を読み取り、マグリットは重なり合うイメージと言葉の衝突に魅了されました。シュルレアリストは出会いに敏感であり、それを誘発する手順さえ心得ていましたが、出会いを意識的に操作することは厳しく禁じられていました。現実が問題である以上、彼らの作品や著述の客観的な信憑性(しんぴょうせい)が常に問われていました。出会いの体験を積み重ね、作品化して多くの人々と共有することで、近代文明が分断した森羅万象(しんらばんしょう)の結びつきを回復することが、シュルレアリスムのねらいであったといえるでしょう。

横浜美術館は、開館前から特色とまとまりのあるコレクションの形成を目指しています。西洋美術では特にシュルレアリスムの作品群の収集に力を注いできました。1983年にマグリットの≪青春の泉≫とデルヴォーの≪階段≫を購入したのを嚆矢(こうし)として、1989年の開館までにダリ、エルンスト、マッソン、ミロらの油彩画を相次いで購入し、今日の展示の基調をつくりました。その後も収蔵作品は徐々に増え続け、現在ではシュルレアリスムの主要作家のものだけでも油彩画、素描、彫刻、版画、写真等を併せ90点を越えています。またそれらの多くは国内及び欧米の美術館の重要な展覧会にも出品されています。

主な出品作家
ルネ・マグリット、ジョアン・ミロ、ヴィフレド・ラム、マックス・エルンスト、オスカル・ドミンゲス、マン・レイ

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