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絵画的写真の展開 1850年代〜1920年代

4. 日本の展開

 幕末期に実用の技術として招来された写真も、19世紀後半になると、表現の一手段と考えられるようになりました。趣味で写真を手がけるアマチュア層が誕生し、各地で団体を結成するにいたります。彼らはソフトフォーカスや絵画的なマチエールを生む印画方法を活用し、水墨画や水彩画を思わせる茫漠とした風景写真などを発表しました。
 そうしたなか、欧米遊学から帰国した福原信三[ふくはら・しんぞう]が、写真集『巴里とセイヌ』(1922年)、著作『光と其諧調』(1923年)を刊行します。自然の光の諧調をそのまま表現に移そうとした福原の作品と理論は、ともすると技法に専心しがちだった写真家たちの意識を、何を表現するかという問題に向けさせることにもなりました。

福原信三|河岸と舟、『巴里とセイヌ』より

福原信三(1883-1948)
《河岸と舟、『巴里とセイヌ』より》
1913(大正12)年(1982年のプリント)
ゼラチン・シルバー・プリント
日本写真会 福原信和氏寄贈

FUKUHARA Shinzo (1883-1948)
Bank and Boat, from “Paris et la Seine”
1913 (1982 Print)
gelatin silver print
Donated by Mr. Fukuhara Nobukazu

 大正から昭和へ移行する1920年代は、個人や自我をめぐる主張が声高になされ、写真においても個の視点にもとづくオリジナリティーが問われるようになりました。デフォルメされた人物像や、身の回りのものを構築的に配置した静物写真を撮った山本牧彦[やまもと・まきひこ]は、日常的な題材を斬新に描写することで、時代をとりまく空気や人びとの内面を浮き立たせています。

山本牧彦|野外人物

山本牧彦(1893-1985)
《野外人物》
1926(昭和元)年 ゼラチン・シルバー・プリント
小西庵子氏寄贈

YAMAMOTO Makihiko (1893-1985)
Figure in the Outdoor
1926 gelatin silver print
Donated by Ms. Konishi Ioriko