• 特別展示:片岡球子
  • 近代の絵画と彫刻
  • 絵画的写真の展開 1850年代〜1920年代
  • コレクション展 ギャラリー・トーク
  • 横浜美術館+JIU-MEDIA Podcast
絵画的写真の展開 1850年代〜1920年代

3. ストレート写真に向かって

 蒸気や雨にかすむ近代都市を主題としたスティーグリッツの写真は、印象派の風景画を参照していることをうかがわせます。しかしそこには、瞬間の光景をそのまま捉えたような臨場感があり、対象にまっすぐに迫る視線も感じられます。1910年代になると、フォト・セセッションのメンバーは、被写体を直截的に写すカメラ本来の特性を活かす方向へと転じていきました。1917年の『カメラ・ワーク』の最終号で特集されたポール・ストランドは、新時代の胎動を象徴しています。その作品には、都市の建造物や路上の名もない人びとなど、これまでおよそ手がけられてこなかった主題が、即物的ともいえるシャープな画像で描かれていました。

アルフレッド・スティーグリッツ|ニューヨーク・セントラル・ヤードにて

アルフレッド・スティーグリッツ(1864-1946)
《ニューヨーク・セントラル・ヤードにて》
1903年(『カメラ・ワーク』No.36, 1913年10月)
フォトグラビア印刷

Alfred STIEGLITZ (1864-1946)
In the New York Central Yard
1903 (Camera Work, No.36, October 1913)
photogravure print

 「ストレート写真」と呼ばれるこの新しい傾向は、鮮明な画面、仰角や俯瞰を強調した新奇な視点、極端なクローズアップ、都市や機械の断片といったモチーフの選択、などを特徴とします。エドワード・ウェストンやイモージェン・カニンガムは、ストレート写真の代表的な写真家です。機械の眼ならではの精緻な再現力と堅牢な画面構成を誇る作品は、同時代の抽象絵画に近接した相貌をも示しています。

エドワード・ウェストン|ヌード

エドワード・ウェストン(1886-1958)
《ヌード》
1925年(1981年のプリント)
ゼラチン・シルバー・プリント

Edward WESTON (1886-1958)
Nude
1925 (1981 Print)
gelatin silver print