• 特別展示:片岡球子
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絵画的写真の展開 1850年代〜1920年代

1. イギリスでの開花

 画家であったデイヴィッド・オクタヴィウス・ヒルは、集団肖像画の下絵にすべく写真を手がけます。やがて独立した肖像写真に取り組み、瞑想的な雰囲気をたたえる人物表現によって、他の肖像写真家たちに影響を及ぼしました。そのひとり、ジュリア・マーガレット・キャメロンは、モデルの外見だけではなく内面をも写しとることを目指しました。顔を大胆にクローズアップにし、ピントの甘さやブレも表現の手段とした肖像写真は、人物に一種の永遠性を付与しています。

 オスカー・ガスターヴ・レイランダーとヘンリー・ピーチ・ロビンソンも画家から写真家に転じ、合成印画を駆使した寓意画のような作品によって絵画的写真の主流を築きました。また、舞台のような背景や人物の叙情的な表情など、見るものに物語を喚起する肖像写真にも、彼らが目指した芸術写真の特質があらわれています。
 こうした人為的な制作に異を唱えたピーター・ヘンリー・エマーソンは、あるがままの自然を捉える「自然主義写真」を提唱しました。田園に生きる人びとをモニュメンタルに描いた作品は、画面のやわらかな質感とあいまって、彼が傾倒していたバルビゾン派の絵画の影響を示してもいます。

ヘンリー・ピーチ・ロビンソン|ポートレートの習作

ヘンリー・ピーチ・ロビンソン
(1830-1901)
《ポートレートの習作》
1873年 鶏卵紙

Henry Peach ROBINSON (1830-1901)
Portrait Study
1873 albumen print

ピーター・ヘンリー・エマーソン|蒲の穂中をゆく

ピーター・ヘンリー・エマーソン(1856-1936)
《蒲の穂中をゆく》
1886年 プラチナ・プリント

Peter Henry EMERSON (1856-1936)
Quanting the Gladdon
1886 platinum print