「シュルレアリスムと美術」展

展覧会概要

「シュルレアリスム(超現実主義)」は1920年前後にフランス文学から始まり、やがて美術や思想、社会の様々な領域へと国を超えて拡がっていった20世紀の代表的な芸術・文化運動です。それは私たちのものの見方や感じ方に強い影響をおよぼし続けています。
日本でも人気の高いマグリット、ダリ、ミロらの作品は、シュルレアリスムの名でひとくくりにされていますが、実際のところその魅力はどこからくるのでしょうか。美術にとってのシュルレアリスムとは何だったのでしょうか。この展覧会は、シュルレアリスムと出会うことで美術に何が起こったのか、そしてそれが現代の私たちにどうつながっているかを考えようとするものです。
シュルレアリスムが美術にもたらした最大のインパクトは、「イメージ」の力の再発見だと言うことができるでしょう。ただ目の前にあるものを写すのではなく、心のスクリーンに映し出されるイメージを忠実に写し取る、新次元の「リアリズム」。想像力(イマジネーション)を無制限に解放し、理性的・美的・道徳的先入観(ありえない、美しくない、よろしくない)を捨て去ることで、“真正の現実”が現れると期待されたのです。展覧会は、第1章「シュルレアリスム美術の胎動」、第2章「シュルレアリスムが開くイメージ」、第3章「シュルレアリスム出現以後の様々なイメージ」で構成されます。シュルレアリスム運動に参加した美術家だけでなく、デ・キリコやダダの作品、広告美術、さらにアンフォルメルやアルテ・ポーヴェラ等の戦後の西洋美術、草間彌生、奈良美智ら現代の日本美術まで、作品総数約120点をひとつの時間軸に並べます。中心を占める第2章では、80余点の作品を「イメージが訪れる」、「反物語-お話しにまとまらないイメージ」、「風景」、「女と愛」、「物と命」、「神話と魔術」、「時空の彼方に」の7節に分けて展示。シュルレアリスムの美術に特有なイメージの成り立ち方とテーマによる分類です。これらのテーマは今日の広告や映像文化の中にもしっかりと受け継がれているのです。
イメージは現代の日常生活に深く浸透して人々にはたらきかけ、私たちもそのはたらきに思考や消費行動の基準をゆだねるようになっています。こうした状況を考えるとき、かつて想像力の解放をうたったシュルレアリスムのイメージを信頼できるものにしているのは何か、と問う必要があるのではないでしょうか。拘束することと解放すること。イメージがはらむ相反する力のどちらを発揮させるのか、その判断は私たちひとりひとりの手にゆだねられているのです。