開館10周年記念 セザンヌ展

展覧会概要

ポール・セザンヌ(1839~1906)は近代絵画の父と呼ばれています。初期には独学で人体デッサンやルーヴル美術館での模写に励み、バロックの劇的明暗法や、ドラクロワ、ドーミエなどの筆致や力動感を学び、厚塗りの暗い色使いで激情のこもった作品を描いています。

やがて印象派のピサロによって戸外の制作へと導かれ、その明るい色調に影響されながらも、セザンヌは光と色彩をめぐる探究にとどまらず、色彩と形態、平面と空間の問題への深い洞察を通して、対象の本質を捉えた堅牢な画面を構築していきます。孤高の生活と絵画への献身から生まれたこれらの作品は、画家自身の精神をも色濃く反映しつつ、従来の美の規範を遥かに超越する新しい絵画の地平を切り開き、フォービズムやキュビズムなど、20世紀絵画の展開に決定的な影響を与えました。この展覧会は、初期から晩年にいたるセザンヌの画業を初期絵画、風景、人物、静物、水浴の5つのグループに分け、それぞれの展開を辿りながら、セザンヌ芸術の実相に迫ろうとするものです。また、本展のもうひとつの重要なテーマは、日本におけるセザンヌ受容の歴史を振り返ることです。現在日本国内に所蔵されているセザンヌ作品をはじめ、雑誌『白樺』、『美術新報』などで明治末期から大正期にかけてわが国に図版で紹介された作品、また松方幸次郎、原善一郎ら収集家が招来した作品を可能な限り展示することによって、日本人が抱いていたセザンヌ像を明らかにしようとするものです。こうした意図の下、本展で一堂に展観される油彩画約60点、水彩素描等約30点の作品群は、セザンヌの場合と同じく世紀の転換期に生きる私たちに、必ずや多くを語ってくれるに違いありません。