開館10周年記念 世界を編む展

展覧会概要

セーターやバスケットなど、毛糸や籐などを編んで作ったものは、私達の生活に欠かすことができません。線的な素材を手で編んでものを作る技法は、古くから世界各地で、日用雑器や衣類の他にも家や舟などの大型の建造物、そして宗教儀式の仮面や祭具を作るために用いられており、人間の生活や精神活動に深い関わりをもつ、最も身近で普遍的な造形手段といえるのです。しかしながら、技術が単純で家庭が主に制作の場であったことから、編んだ作品は、これまで手工芸品として考えられ、芸術性が論じられることはあまりありませんでした。

その一方、編む技法は、他の造形方法にはない特色を持っています。つまり、線という一次元の造形要素から複雑な形の立体や平面を構築することができる点、素材を限定しない点、作品の大きさを自在に広げて行くことができる点、編み方や素材によって多様なパターンやテクスチュアを実現し得る点、編み上げられるまでの時間の痕跡と人間の手の痕跡とを留めている点、そして編む行為が喚起する家庭的な幸福感、編み目や結び目が持つ超自然的な力のイメージなどがそれです。これらの特徴は、豊かな芸術表現の可能性をはらんでいるのではないでしょうか。

現代に生きる美術家たちのなかには、このような「編む」技法の特徴からインスピレーションを受け、既成の芸術分野の範疇を超えて制作活動をしている作家たちがいます。それらの作品は、構造や形態など造形的探究に立脚するもの、編む行為や編まれたものが担う意味に着目して社会的メッセージを表現しようとするもの、そして、自然との関係を色濃く反映したものに大きく分けることができるでしょう。

この展覧会では、小さなオブジェから大規模な彫刻、絵画、インスタレーションなど、様々な表現形式をとりながら、編む技法を用いた作品を生み出している現代の優れたアーティスト24人を取り上げ、1)構造と形、2)文化と身体、3)自然と人間という三つのセクションによって、この技法による芸術表現の幅広い可能性を紹介します。