ルイーズ・ブルジョワ展

展覧会概要

本展はアメリカの現代美術を代表する作家の一人であるルイーズ・ブルジョワの芸術を紹介するものです。ルイーズ・ブルジョワは1911年にパリで生まれ、ソルボンヌ大学で数学を学んだ後に美術に転じ、1938年の渡米を機に本格的な美術作家への道を歩み始めました。以来現在にいたるまで一貫してニューヨークを拠点に制作を続けています。ルイーズ・ブルジョワの芸術は、自伝的要素を多分にはらんでいることを特徴としています。すなわち幼児期の複雑な生活の記憶(たとえば彼女の深層意識に巣くう暴君としての父親の存在)に形象を与えることを制作の直接の動機としているのです。しかしそうして生まれた執拗なまでに人間の身体へのこだわりを感じさせる作品は、極めて個人的な体験を基盤としながらも、あらゆる人間の記憶を触発し、世代を超えて人々の関心を呼んでやみません。

ブルジョワの芸術はまた、1980年代以降、近代美術を成り立たせてきた諸制度への批判が高まり、フェミニズム・アート、あるいはポリティカル・アート(政治的美術)が」興隆をみた中で、常に先駆的巨匠として称賛されてきました。確かにブルジョワの芸術は、結果として男性を主体に成立してきた文化的な制度に対する果敢な異議申し立てを内包しています。しかし、その強靭な、私的想像力によって形成される特異な作品世界は、実際にはいかなる枠組みにも収まらない壮大なスケールを有しており、90年代にはいってからもホイットニー美術館の、バイエニアル展、ヴェネツィア・ビエンナーレ、カッセルのドクメンタなど現代美術の最前線で作品が発表される中で、幾度となく世界の美術界に衝撃を与え続けてきました。ブルジョワの芸術は衰えを知らず、さらに活力を増して、今なおアクチュアルな前衛に位置する作家として、高い評価を得ています。今回の展覧会は、日本ではじめてルイーズ・ブルジョワの全貌を、作家とそのスタジオの全面的な協力を得て紹介するものであり、初期の素描、絵画、彫刻からの最新のインスタレーションまで、約70点の作品で展観いたします。