ロバート・フランク:ムーヴィング゙・アウト

展覧会概要

この展覧会は、世界の写真史上最も重要な写真家の一人であり、映画史にも優れた業績を残したロバート・フランクの写真芸術の全貌を、彼の制作した映画・ビデオの上映と併せてたどる日本初の大規模な回顧展です。

ロバート・フランクは、1924年スイスのチューリッヒに生まれ、第2次世界大戦中より同地でミヒャエル・ヴォルゲンジンガーに師事して写真制作の基礎を学びました。1947年にアメリカへ移住し、程なくアレクセイ・ブロドヴィッチに見い出され、主に『ハーパーズ・バザー』誌と『ジュニア・バザー』誌のためのファッション写真を手掛け始めました。1955-1956年、グッゲンハイム奨励金を得て全米を記録する旅に出て、その記録は2万コマの中から厳選された83枚の写真からなる1958年の写真集『アメリカ人』に結実しました。ここで彼はそれまでの写真芸術における楽観的でヒューマニスティックな倫理観などの価値基準を徹底的にくつがえし、無秩序な現代社会に生起する小さなエピソードの断片を直観的な視点によって見事に捉えています。寂しさ、孤独、怒りなどの感情の率直な吐露と、強烈な批評意識に満ちた『アメリカ人』の写真は、次第に多くの写真家たちにとって現代の社会的風景を描き出す上で大きな指針となっていきました。しかしフランクは『アメリカ人』の余りにも大きな反響から逃れるかのように、1950年代以降、映画・ビデオの製作に没頭するようになりました。その中には伝説的な映画《プル・マイ・デイジー》(1959年)や自伝的作品ともいうべき最新ビデオ作品《ムーヴィング・ピクチャーズ》(1994年)が含まれ、今回の展覧会でも重要な位置を占めています。

ニューヨークと1970年以後に居を構えたカナダのノヴァ・スコシアを拠点に、フランクは写真と映画・ビデオの製作を通じて、ささやかな日常や身の回りの環境の中に現れる真実を一貫して追求すると同時に、現代社会の繁栄という神話に真摯に異議申し立てを続けています。現代の写真と映像表現の端緒を開き、今なお新鮮な作品を作り続けるフランクは、世代と国境を越えた写真家、映画作家、さらには小説家、音楽家など、広範なジャンルの芸術家たちに大きな影響を与えています。 本展は、ロバート・フランクの1944年から1994年に至る約50年間の制作の歩みを、約160点の写真と、映画・ビデオ作品17本により概観しようとするものです。