「演劇で美術鑑賞『彫刻との対話から生まれた物語』」を開催しました

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中高生が書いた戯曲を俳優が演じるスペシャル企画「演劇で美術鑑賞『彫刻との対話から生まれた物語』」を3月29日に開催しました。

 本企画のそもそもの始まりは、2016年夏に開催した当館の中高生プログラム。約5か月にわたるプログラムのなかのひとつとして、演出家の市原幹也さんを講師に迎え、「作品と自分とのおしゃべりを戯曲に書く」というワークショップを行いました。

横浜美術館のコレクションのなかから好きな作品を1点選んで1対1でじっくりと向き合い、「作品との出会いから別れまで」をテーマに原稿用紙1~2枚程度の短い戯曲を書き上げた中高生たち。ワークショップでは戯曲を書く前に、モノとおしゃべりする練習(!)をしたり、戯曲の書き方の形式を教えてもらったりもしました。そうして出来上がった戯曲がどれも想像力あふれる興味深いものだったので、市原さんのご提案により、これを実際に作品の前で上演してもらおう!ということになったのです。

公演当日は中高生の書いた11作の戯曲のなかから、彫刻作品をテーマにした8作品を上演。ギャラリーツアー形式の演劇体験による作品鑑賞という、これまでにない試みとなりました。出演者は、飴屋法水さん、山内健司さん、吉見茉莉奈さんの三人。みなさん第一線で活躍する豪華な布陣です!「作品」役、「私」役、そして戯曲の上演では本来読まない「ト書き」を読む役を3人で演じました。 


ツアーの導き役は山内健司さん。観客のみなさんに語りかけるように横浜美術館が建っている場所の歴史を紐解き、徐々に時空を超えた戯曲の旅へと誘われます。

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「ここは昔、海でした」と観客に語りかける山内健司さん

「初めて出会ってから6年経った2016年、夏。石造りで建てられたその建物にその鳥はいた。」

コンスタンティン・ブランクーシ《空間の鳥》の前で、最初の作品の上演が始まります。

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会場はコレクション展。階段状になっている石造りの大空間のグランドギャラリーには、彫刻が点々と展示されています。ときに作品に寄り添うように、ときに空間を駆け巡って演じる俳優たち。静かなグランドギャラリーにその声が響くと、一気に場に緊張感が生まれ、美術館が演劇の力によりすっかり異次元の空間に変わりました。

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「私は走った。恐怖を隠して、崖まで思いっきり走った。」会場を駆け巡る吉見茉莉奈さん

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ほぼ全編にわたり「作品」役を演じた飴屋法水さん

ルネ・マグリット《レカミエ夫人》の戯曲はショートミステリー仕立て。「今から約200年前、18XX年の昼すぎ、欧州の国の田舎町...」と、中高生の戯曲は自由に時空を超えて展開します。

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そして、ツアーはグランドギャラリーから3階のコレクション展ホワイエへ。写真展示室の前、おなじみのクレス・オルデンバーグ《反転Q》の前では何やら絡まって拮抗している二人が...。

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「ねぇ、何をしているの?」「ここから出ようとしているんだ」「助けてあげようか?」「無理だよ。そしたら君まで閉じこめられてしまうからね」

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イサム・ノグチ《マイアストラ、ブランクーシへのオマージュ》では、鈴の音と口笛が響く。

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ハンス(ジャン)・アルプ《成長》の前で。
「風とともに作品は飛びたっていった。薄暗い部屋には、ハート型をした銅のかけらと、私が残された。」

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最後はスタートのブランクーシの作品に戻り、これまで上演した作品が並ぶ空間を見下ろしながらの観劇。作者の中高生たちも真剣なまなざしで見つめた。

あっという間の40分間のツアー。終わる頃には、「私」と「作品」をめぐる8つの別れのストーリーをまるで自分が追体験したかのように、中高生と俳優たちのつくり出した不思議な世界に引き込まれていました。お客様からは「ストーリーを役者さんたちの声で聞くと、作品のイメージがわっと広がる感じがした。」「上演中、周りの彫刻も動き出しそうに見えた。」「「私」を起点にして、時空間をとびこえていく中高生の発想にびっくり!」「ひとつひとつの作品が物語を織り成し、空間となって広がって、1作品、また1作品と増えていくごとにその空間の広がりに包まれていって...何とも不思議な宇宙に漂っているような感覚でした。」など、様々な感想をお寄せいただきました。 

演劇で美術を鑑賞するという今回の試み。当館のコレクション作品から生まれた中高生による物語が、俳優たちの声や身体をとおして美術館の空間に演劇として立ち上がり、これまでにない新鮮な体験をお楽しみいただけたのではないでしょうか。中高生たちの書いた戯曲の言葉ひとつひとつを大切に、丁寧に読み込み、そこにさらに創造力を注いでこの演劇をつくり上げてくださった出演者のみなさん、演出の市原幹也さん、ありがとうございました!


**おまけ**

当日、公開リハーサルの上演後、出演者のみなさんと戯曲の作者の中高生が初対面!

それまでずっと戯曲の言葉と向き合っていた出演者のみなさんは、「やっと会えたね~」と一様に笑顔に。「あの戯曲のこの部分はどんなイメージで書いたの?」と、それまで気になっていたことを次々に質問されていました。中高生たちも「自分の言葉では表現しきれないほどすごかった」「自分のイメージとは違っていた部分が面白かった」と、みんな感激の様子でした!

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写真:西野正将