篠山紀信展 学芸員コラム vol.4 「写真は光だよ」

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「篠山紀信展 写真力」が開幕して1ヶ月が経とうとしています。1月28日から、展示室で「学芸員によるギャラリートーク」が始まりました。今回のギャラリートークは、このコラムを執筆している大澤、長谷川、中村が順番に担当し、全3回の予定です。(1月28日は終了、残りは2月11日、2月25日 いずれも土曜日15:00-15:30)

今回は、1月28日のギャラリートークで話題にあげた、篠山紀信さんの写真をとおして見る「写真と光」の関係について書いてみたいと思います。

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本展には、縦3メートル、横2メートルの蒼井優さんの写真が展示されています。

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《蒼井優》2011年、展示風景

この写真について、篠山さんは『芸術新潮』(2012年10月号)で書かれていらっしゃいますが、「ぽつんと1本立った街灯の下で撮ったもの」だそうです。そのためか、背景は黒と灰色のグラデーションのなかに、人気のない道が消えていくように見え、上からの光に照らし出される蒼井さんの白い肌が、闇に吸い込まれそうな黒服をバックに、一段と際立って見えます。また、左手首を右手できゅっと掴みながら、少し不安げな表情で立つ姿から、蒼井さんのもつ繊細さが見事に伝わってきます。

篠山さんは『芸術新潮』のなかで、この写真とともに「写真は光だよ、光!」と、写真と光の関係について記されています。写真の歴史上、この写真と光にまつわるお話しは、多くの写真家が言及してきたことでした。例えば、当館の収蔵作家であるラースロ―・モホイ=ナギというハンガリー出身の写真家は、20世紀初頭、写真は新しい「光の造形」であるとして、フォトグラムなどの実験的な表現を支持し、写真の表現領域を拡大させました。また、写真は英語でフォトグラフィ(Photography)ですが、その語源を辿ると、フォトはギリシャ語でフォトス(光)、グラフはギリシャ語でグラフォス(書く)になります。このような歴史からも、写真は光とは切り離せないメディアであることが分かります。

篠山さんは、さらにこのような言葉も記されています。

「写真は光がなくちゃあ写らない。(中略)朝起きれば当たり前のように陽が昇り、夜になれば電灯がつく、あまりに今の人間は光に無頓着になりすぎていないか。もっと光を大切にしよう。敏感になろう。これが写真力の基本です。」

この写真は、蒼井さんの女優としての力と、モデルをリスペクトし、相手の最良の姿を写真におさめようとされてきた篠山さんの光に対する鋭敏さが加わることで撮ることのできた、美しい一枚だと思います。

(大澤紗蓉子)