蔡國強展スタッフコラム 第10回 《朝顔》制作プロジェクト第4回

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第10回

≪朝顔≫制作プロジェクト第4回 点火!

朝から始めた《朝顔》爆破の仕込みは午前中に終わり、昼食後点火することになりました。所轄消防署との申し合わせで、毎日爆破作業の時間を連絡することになっていましたので、見通しが立ったところで消防署に電話を入れます。防火シャッター閉鎖よし、排煙準備よし、火薬格納施錠よし、可燃物撤去よし、爆破現場からの人員退避よし、と一通り確認が済んだところで、蔡さんが導火線に先細の点火器で着火します。シュー、バーンではなくて、シュワッポ、シュワッポ、シュワッポと、大体3つくらいのかたまり毎に、点火位置から近いところから順に火が回っていきます。ッポ、というのは、グラシン紙の下に火がひろがると、その分グラシン紙が花壇の中でポットパイの皮のように膨らんで、熱に耐えきれずにふわっと破れるときの音です。静かな爆破ですが、とても絵になる光景でした。ほんの数秒の爆破作業の後、グラシン紙を固定していた煉瓦を外して、中の様子を見ますと、なんということでしょう、それまで赤みがかった肌色のテラコッタが、いぶし銀のような深みのある金属色を帯びているではありませんか。何か錬金術師の実験に立ち会ったような貴重な体験でした。

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(蔡さん着火するの図)

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(蔡さん色づきを愛でるの図)

最終組み立てと展示

爆破の終わったテラコッタが冷めたところで、もとのパレットにきれいに積んで展示室に運びます。展示は別の日に2日間にわたって行われました。まず新潟の山中から蔡スタジオのTさんが採ってきた天然の藤蔓を高さ10メートルの天井に固定したトラスやパイプにワイヤーを使って固定する作業です。生の藤蔓は事前に数日間燻蒸してあります。曲がり具合や長さの異なる5本の蔓を床上で仮組して全体の形を決め、蔡さんがチェックしたら蔓同士をボルトナットで固定します。この時ナットが喰い込まないように、数日前に購入したトタン板を適当に切って、ワッシャーの代わりに当てました。こうしてできた全長10メートル近い、重くて太い竜のようにのたうつ蔓を、Tさんと施工のS社の人たち3、4人がかりで自走式のテーブルリフトを使って持ち上げ、要所にワイヤーを巻いて仮固定しました。蔡さんがチェックしたところでしっかりと固定し、写真をとり、プリンターですぐに大判の紙に出力します。蔡さんが現物を見ながら花の位置を写真に直接マーカーで記入します。

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(藤蔓の図)               (取付け1%の図)

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(取付け10%の図)           (取付け25%の図)

いよいよ花や葉の取付けです。横浜美術大学のM先生と学生さんたちに、蔡さんの指示図を見ながら床に近いところから手の届く範囲で取り付けてもらいます。番線の径は太いので、けがをしないように軍手で蔓にぐるぐると巻きつけていきます。高所作業が必要な高さはTさんと専門業者さんにつけてもらいました。全体の6割くらいが付いたところで蔡さんがチェック。葉と花の密集具合や方向性をみて、こちらをたくさん、あちらは軽く、といった指示に従って約600個を取り付け終わりました。《朝顔》ですから朝日の方向にたくさんの花が向くようになります。「朝日はこちらからです」という蔡さんの指示に従い、スポットライトやダウンライトの光量、方向を学芸員がセットして完成です。展示をご覧になるときは是非朝日の方角がどちらか見つけてみてください。横浜美術大学のみなさん、本当にお疲れ様でした。ご協力ありがとうございました。(中村尚明)