新潟レポート (展覧会コーディネーター 庄司尚子)

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はじめに

夏本番をむかえた7月末、新潟の異なるエリアで開催されている二つの国際芸術祭を訪ねました。
ひとつは新潟県南部、長野県との県境にあたる十日町市と津南町の広域を舞台とする「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012」。2000年の第1回展から3年に一度、継続して開催されており今回で5回目を数えます。
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越後妻有アートトリエンナーレのリーフレット類。右下のガイドマップは、広げると全作品が網羅された大きな地図になる(100円)

もうひとつは日本海沿岸唯一の政令指定都市である新潟市で開催されている「開港都市にいがた 水と土の芸術祭2012」。2009年の第1回展に続き今回が2回目の開催です。

越後妻有アートトリエンナーレは地域活性型芸術祭の草分け的な存在で今や国内で開催されるトリエンナーレの代表格といえます。NPO法人と行政がタッグを組み、アートを媒介とした地域再生、観光産業の創出など、アートによる地域振興を目的とするプロジェクト、大地の芸術祭の里の3年に1度の活動成果の発表の場として位置づけられています。

一方、水と土の芸術祭は新潟市が主導した実行委員会により組織され、アートによる新潟の歴史や風土の魅力の発信と市民主体のプロジェクト支援による市民協働を目的としています。中心部のメイン会場とあわせ、市内の歴史的建造物なども活用しながら地域の魅力の発信を目指します。
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水と土の芸術祭のフラッグ。作品のおかれた場所近くで見ることができる。色はブルー(水)とブラウン(土)の2色

組織形態は異なりますが、会場を広域に設定し各所に作品を点在させることでエリア内に人を回遊させ、地域経済の活性化と人的交流の促進という点で二つの芸術祭は共通しています。
先月紹介されたドクメンタのような国際芸術祭となると、通常の美術館での展示では難しい大規模な作品やジャンル横断的なプロジェクトを見ることができ、刺激になります。また、アーティストと市民との交流の軌跡や地域へのアプローチを通してその地の歴史的背景や風土を知るのも楽しみのひとつです。駆け足の調査の中で新しく設置された大規模な作品を中心に、注目すべきプロジェクトなどをご紹介しながら二つの芸術祭をレポートします。


大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012


越後妻有アートトリエンナーレ2012では、44の国と地域、310組のアーティストによる作品展示が行われています。会期中は展示のほか、パフォーマンスや演劇などのプログラムが行われており、約760㎢の広域に点在する作品をめぐる公式ツアーも多数企画されています。
越後妻有地域は日本有数の豪雪地帯であり、産業の衰退と地震や豪雨等の天災による人口の流出と高齢化がすすみ、このことがトリエンナーレ実施の契機となっています。アートで地域を活性化する、というディレクターの発案に対して、当初は地元から猛反対があったとききますが、第5回をむかえた今回、オープニングにも大勢の地元関係者が訪れ、また街中のあちこちにフラッグや案内図がおかれるなど、お祭りらしい盛り上がりをみせており、3年に1度のイベントとして定着している印象を受けました。


家プロジェクト―地域の交流を促す作品
越後妻有アートトリエンナーレといえば家プロジェクトがまず思いうかびます。過疎地域である越後妻有には廃校や空き家が数多く存在しており、これらを活用し作品化するプロジェクトが主要な展示となっています。中でも家1軒を一人のアーティストにゆだねる家プロジェクトは、越後妻有アートトリエンナーレの特徴といえるでしょう。今年新設された作品の中では、アン・ハミルトンによる《金属職人の家》が、同じ津南エリアのドラゴン現代美術館での展示と対をなす美しい作品として印象に残りました。2005年の横浜トリエンナーレにも参加したハミルトンは、近年音を使った時間と空間を織りなす作品を発表しています。蔡國強の招へいにより今回参加することとなったハミルトンは、オープニングのシンポジウムの中で、本作について、金属加工を行う職人が暮らしていた家で過ごし、その作業の音が集落に響いていた日のことを思い、この集落のための音楽を作りたいと思った、と語りました。《金属職人の家》では、アコーディオンの部材を使った仕掛けを来場者が操作することにより、家全体が音を奏でます。鳴らす楽しさだけでなく、仕掛けも美しく、観る人がともに操作することで対話が生まれます。
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左:蔡國強の作品《ドラゴン現代美術館》のそばに設置されたアン・ハミルトンの作品。脇から出たチューブに息をふきこむと音が鳴る
右:《金属職人の家》のなかの仕掛け。紐を引くと音が鳴りだす仕組みになっている。場所により音が異なるのも楽しい

近くにはレジデンス施設を備える「東アジア芸術村」などもあり、老若男女、国籍や言葉を超えて人々がつながり、交流が生まれる場となることを予感させる作品でした。


CIANの活動
越後妻有アートトリエンナーレでは作品制作や地域振興を目的とするプロジェクトが多い中で、川俣正の提唱により松代生涯学習センター(旧清水小学校)を拠点に2009年から展開するCIAN(Center for Interlocal Art Network):地域芸術研究所はユニークな存在です。越後妻有アートトリエンナーレにかかわる基礎資料のアーカイブ基地でもあるこちらの会場では、地域社会における芸術表現活動にかかわる資料収集、蓄積と研究、そして収集資料の展示を行っています。今回は、2011年に亡くなった美術評論家中原佑介氏の蔵書30,000冊を用いたインスタレーション《中原佑介のコスモロジー》を展示しています。資料取扱いの実践として、CIANの活動を具体的に示す機会となっただけでなく、過去4回のトリエンナーレでアドバイザーとしてかかわり、縁の深い中原氏の知の変遷を顕現化してみせるタイムリーな企画でした。
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《中原佑介のコスモロジー》のインスタレーション風景。周りの壁面には中原の言葉も記されている


駅プロジェクト―住民との協働でつくるパブリックアート
越後妻有アートトリエンナーレではまた、JR飯山線の各駅で展開されるアートプロジェクトがはじまっています。駅は生活と密接に結びつく場であり、また、旅人がはじめてその地域に足を踏み入れる場所でもあります。今回は2駅、越後田沢と下条(げじょう)で、それぞれ建築家とアーティストとのコラボレーションによる作品がお披露目となりました。越後田沢駅では、アトリエワンによる《船の家》と河口龍夫による二つのインスタレーションが展示され、EAT&ART TAROによる食をテーマにしたプロジェクトが、週末ごとに開催されています。
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越後田沢駅に設置されたアトリエワンの作品《船の家》と、河口龍夫《未来への航海》。奥にはもう1点河口作品が展示されている

下条ではみかんぐみ+神奈川大学曽我部研究室による大きな藁葺き屋根のタワー《下条茅葺きの塔》と、キドラット・タヒミックと小沢剛のコラボレーションによる小屋型のオブジェが設置されています。
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下条駅前での一枚。みかんぐみ+神奈川大学曽我部研究室による茅葺き屋根タワーの存在感が際立つ

これは下条の街全体をつなぐ継続的なプロジェクトで、これらがどのようにひろがっていくのかが楽しみです。プロジェクト開始のぎりぎりまで、土地の使用許可など問題が山積みだったそうですが、オープニングにあわせどちらの駅にも地元の方が大勢訪れており、アーティストと住民との密な対話と交流の中でプロジェクトがすすめられていることがうかがえました。地域の顔となる駅前のオブジェを市民協働によってつくりだす駅プロジェクトは、パブリックアートの新しいありかたとして今後の展開が注目されます。


美術館の新設―展示の課題も
今回、越後妻有地域にひろがる大地の芸術祭の里の中心拠点として越後妻有里山現代美術館[キナーレ]がオープンしました。トリエンナーレ開始から12年目にして設立された現代美術専門の施設です。建物中央の屋外部分では、オープニングの特別展としてクリスチャン・ボルタンスキーの壮大なインスタレーション《No Man's Land》が異彩を放っていました。
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クリスチャン・ボルタンスキー《No Man's Land》。このクレーンは自動運転ではなく、実は手動。地元農家の方などが交代で操作している

また、会場では12組のアーティストによる展示が行われています。カールステン・ヘラー、レアンドロ・エルリッヒ、ゲルダ・シュタイナー&ヨルク・レンツリンガーら、国際的に活躍する現代美術家の名前がずらりと並びます。カールステン・ニコライやエルムグリーン&ドラッグセットなど過去の横浜トリエンナーレに参加したアーティストも出品しており、その一人マッシモ・バルトリーニは館内に新設されたバル(カフェ)全体を作品として発表しています。
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マッシモ・バルトリーニ feat. ロレンツォ・ビニの作品《○ in □》。ヨコトリ2011では美術館に鉄パイプのオルガンを設置したバルトリーニの新作

国内作家のうち、クワクボリョウタの《LOST#6》は地元特産の織物産業に由来する道具を用い、光と影によるノスタルジックな風景をつくりだし、多くの人が足をとめていました。それほど広さのない空間に大型作品が詰め込まれ、正直美術館の展示というには厳しいものがありましたが、作品個々はクオリティが高く、誰もが現代美術の楽しさに触れられる、越後妻有アートトリエンナーレの入口としてふさわしい内容でした。

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左:越後妻有アートトリエンナーレでは、広大な会場間の移動を誘導するサインがとてもよく考えられている。ただし、このサインは中国のアーティスト劉佳婧 (リュウ・ジャジング)の作品。どこまでも標識が続く
右:小沢剛+油絵茶屋再現実行委員会による「油絵茶屋再現」の会場風景。受付や作品管理などにサポーターが多数かかわっているのも越後妻有アートトリエンナーレの特徴


開港都市にいがた 水と土の芸術祭2012―4人のディレクターによる多彩な視点


次におとずれた水と土の芸術祭2012は「転換点~地域と生命(いのち)の再生にむけて」をテーマに、新潟港に面した「万代島旧水揚場」をメイン会場として新潟市内全域を舞台に展開されています。

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水と土の芸術祭メイン会場の入口に設置された曽我部昌史+神奈川大学曽我部研究室によるチケットブース。廃材を使うことで場所の歴史が現れてくる

市の面積は726.1㎢。東京23区よりも大きく、越後妻有地域とほぼ同じ広さという市内のあちこちで各種のプロジェクトが展開されています。アートプロジェクト、市民の企画立案による市民プロジェクト、シンポジウムの3本柱での事業構成の中で、メイン事業といえるのが、実行委員会が主催するアートプロジェクト。41組のアーティストによる新作展示に加え、2009年の第1回展から継続展示されている作品とあわせ、合計61組による作品展示が行われています。美術家、美術教育、舞踏家、現代美術専門と異なる立場の4名のディレクターが選出したアーティストは、いわゆるビエンナーレ、トリエンナーレの常連アーティストばかりではなく、音楽や演劇、詩人、また民俗学、文化人類学的なアプローチで制作を行うアーティストなど多岐にわたっています。1万年以上前から人が暮らし、港、治水、震災等様々な歴史を持つ新潟。古来から人の交流も盛んであったこの場所の魅力を引き出すべく、さまざまな視点をもちこみ、プロジェクトを展開しています。


メイン会場―ダイナミックなインスタレーション
駅からタクシーに乗り、「万代島旧水揚場」へ行きたいと伝えたところ、運転手さんに通じず、やがて「ああ、魚揚場(さかなあげば)のことか!」。新潟市民には"魚揚場"という施設の機能のほうが記憶に深く結びついているのかもしれません。ともあれ、今回、新潟港に面した中心地にメイン会場が設定されたことで、特に市外、県外から訪れる来場者には、広域にわたる芸術祭の会場構成もイメージしやすくなっています。週末中心に市内のアート作品をめぐる周遊バスも、ここから発着しています。
メイン会場の屋外には、消波ブロックを使った冨井大裕の巨大な作品《王様と私達》が設置され目をひきます。
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冨井大裕の作品《王様と私達》。ヨコトリ2011でも何万個もの画鋲を美術館の壁にさした作品で人々を驚かせた

積まれているのはただのブロックなのに、権力者とそれをささえる人民の構図に見えてしまう...、すっかり冨井さんの術中にはまった感じで思わず笑ってしまいます。メイン会場の万代島旧水揚場は、かつて魚の水揚げと競りが行われていたという場所で、プランニングは神奈川大学曽我部研究室の手によるもの。もともとあった建物の機能や、残されていた備品をフル活用した空間で、こちらでは19組のアーティストが展示を行っています。


先日、横浜トリエンナーレ学校での水と土の芸術祭実行委員会によるプレゼンテーションでは、「水と土の芸術祭の出品作品の特徴は『大きい』『重い』」という話がありましたが、メイン会場にもそのような作品が並びます。
中でも圧巻なのは、大かまぼこエリアに展示されているインスタレーション群です。2,850㎡の巨大な空間の大半を2人のアーティストが占有しています。まず最初に出会うのが大友良英+飴屋法水たちによる巨大なインスタレーション《Smile》。中央に新潟市内の解体現場から出た廃材で組み立てられたスケルトン状態の家が据えられ、木材、廃棄物、古い家電製品などが並び、東日本大震災後の被災地の風景を想起させます。天井の一部が開いており、外光がさしこみ、港からの風や波が直接入り込む会場で、音やモノによって漁港であった場の記憶やそれに連なる人々の暮らし、生活の痕跡を示し、見る人によってさまざまな解釈を可能にする、壮大な作品でした。
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大かまぼこエリアに作られた大友良英+飴屋法水たちのインスタレーション風景。中央に骨組みだけの家がそびえ立つ

大友良英+飴屋法水たちの"たち"は複数の協働者とのコラボレーションを意味しており、開幕後の大友さんのブログでは多くの協力者の名前とともに感謝の言葉が記されていました。飴屋さんは開幕後も新潟にしばらく滞在し、作品に手を入れ続けていたということで、現在も来場者が持参する靴や家電により会期中どんどん作品が変化していく、まさに今回の水と土の芸術祭とともにある作品といえるでしょう。

奥には原口典之のインスタレーション作品《新潟.景12》が続きます。原口作品の中では最大級のオイルプールが据えられ、また白いロープが瀧のように天井からたらされています。古い線路がつるされた空間では15分に1度、海水がスコールのように降り注ぎ、来場者も傘や長靴を借りて空間を体験することができます。雨の多い新潟の気候を再現したいという原口さんの熱意を感じ、設営を担当した業者さんが奮起して実際の雨により近い雰囲気で水がでるように工夫をこらしたとのことで、大屋根の下に新潟の自然を丸ごともちこんだ迫力のある作品でした。
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原口典之の巨大な作品。迫力も十分だが、展示中のメンテナンスにも現場のさまざまな努力があると聞く
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海水が降り注ぐ様子

一方、小かまぼこや旧水産会館、別棟での展示は写真、映像、インスタレーション、ワークショップなどバラエティに富み、土地の歴史や風土、現代社会が内包する課題をテーマとした作品が並びました。地元新潟の公害問題を原発事故以降の現代の問題につなぐ藤井光の映像作品《わしたちがこんな目にあって、あんたたちは得をした》など、意欲的な作品が多く、全体にクオリティが高いと感じました。それだけに展示に関してはもう少しきちんとした空間でみせられたら...と感じる作品も少なくなく、大かまぼこのインスタレーションが素晴らしかった分、少々残念でもありました。
別棟のwah documentsによる《おもしろ半分制作所》の内部は二階建ての建物の構造を解体して何層にも分かれた迷路のようなつくりとなっており、子どもだけでなく大人にとっても発見のある楽しい空間となっていました。
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入口に「おもしろ半分制作所」という看板がついている。屋上に作られたオブジェにも注目


郊外の作品―アクセスの課題
実行委員会事務局の方に車でご案内いただき、いくつか郊外の作品もまわりました。市内西南部の西蒲エリアでは、角田山妙心寺客殿の特徴的な大屋根の内側に佐々木愛が当地で滞在制作した大作の壁画が展示されています。大屋根近くに特設ステージが用意され、佐々木さんの作品だけでなく屋根の構造も間近にみることができる、地域の魅力を発信する、という芸術祭の理念を体現するような展示でした。
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お寺の大屋根裏に展示された佐々木の作品。地元でもお寺と現代美術のコラボレーションとなったこの作品は話題になっているそう

西野達の作品《知らないのはお前だけ》は小須戸エリアにある既存の教員住宅を使い、階段を上り、2階のギャラリーから階下の部屋をのぞき見るという作品で、トイレとお風呂以外の天井がなく、階上から部屋にいる人と会話をすることもできます。かなりきわどい作品のように思えますが、実際に中に入ってみると天井の高い家にいるような感覚で上からの視線も意外に気になりません。部屋に滞在して「作品」となってみたくなる作品でした。
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西野達の作品。会期中、滞在してくれる人を募集中

ほかにも何ヵ所か郊外作品をまわりましたが、なにより会場間の距離が思いのほかあり、移動に時間がかかります。岩室温泉で継続している大学との連携プロジェクトなど、市民プロジェクトも主に郊外で行われていますが、街中のこみ入った路地の中にある作品など、土地勘のある地元の方と一緒でないとわからないのでは、と思われるものもありました。また休場日がまちまちであるなど、近隣在住者はともかく、それ以外の来場者のことを考えると会場運営やアクセス、サインなどには課題があると思われました。


おわりに
どちらの芸術祭も短い時間で本当に駆け足でまわったため、見落とした作品も数しれず、すべてをお伝えできているわけではありません。民間主体で行政の支援をうける越後妻有アートトリエンナーレと行政主導で推進される水と土の芸術祭では、スキームも歴史も異なるため一概に比較はできませんが、全体の印象としては、越後妻有アートトリエンナーレは先行し回を重ねた分、運営全般について一日の長があるように思えました。ただ、作品については規模の大小にかかわらず、どれもフレームの中におさまり、破たんのない印象をうけました。
一方の水と土の芸術祭は2回目ということもあり、運営も手探りな面がみえますが、アーティストがいきいきと場にとりくんでいる様子がみてとれ、全体に表現の大胆さ、ダイナミックさが印象に残りました。

越後妻有アートトリエンナーレ出品作家のアン・ハミルトンは前述のシンポジウムの中で、他の土地で作品制作を行うことについて、まずはその場に静かに身を置き、耳を澄まし、その場の空気、温度、風、においなどを五感を総動員させて感じながら、その場において「問うべき問いを問うているか」、「正しい問いを発しているか」を考えると語っていました。この姿勢は滞在制作を行うすべてのアーティストに共通するものでしょう。アーティストの問いをうけとめ、正しく発信すること。国際芸術祭のような発信力の高い展覧会ではなおさら大切なことだと感じた、今回の芸術祭リサーチでした。

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左:メイン会場にあるみずつちカフェ「apop」の入口
右:カフェのちかくにある公式ショップ「blue & brown」
こういった芸術祭では、それぞれに工夫をこらしたカフェやショップが作られる。観客としては、それぞれのメニューやオリジナルグッズがやっぱり気になるところ


プロフィール


庄司尚子(しょうじ・なおこ) 横浜美術館展覧会コーディネーター

横浜美術館が青春の汗と涙に溢れた伝説の滞在制作プログラム「AIMY(エイミイ)」や、館内各所に若手アーティストの作品を展開させた「NAP(ナップ)」を支え、横浜から若手が羽ばたく姿を見つめてきた(現在も見つめている)アーティスト育成のスペシャリスト。その明るさ、タフさ、フットワークの軽さと、作家と作品を愛する心で現場を盛り上げ展示をつくる。この勢いが「ヨコハマトリエンナーレ2011」における美術館展示の礎となる。紹興酒のチェイサーはビール、合気道は黒帯。アーティストを目指す学生さんは、この顔をみかけたら、並々ならぬ厳しさ覚悟で自己アピールをすべし。
鎌倉生まれ。鎌倉在住。現在、「はじまりは国芳―江戸スピリットのゆくえ」(11/3-2013.1/14)、「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」(2013.1/26-3/24)と、2013年度春まですべての展覧会を担当中。

主な仕事
創造活動支援プログラム
『アーティスト・イン・ミュージアム横浜 (AIMY)』(2005-2009)
『New Artist Picks (NAP)』(2007-2008)
「横浜美術館 with バザール」(2008)

その他
「ヨコハマトリエンナーレ2011」(2011)